小笠原の水先案内人

vol.44 2017年10月05日配信

Contents ★ミナミハンドウとハシナガ・その1★
     ★ミナミハンドウとハシナガ・その2★
     ★カメスイム★
     ★ニセ子イルカ?★
     ★台風来襲★
     ★Tomocolumn 36「群れで生きるマッコウ」★
     ★新米スタッフから★
     ★寄港便と縁結びツアー★
     ★お知らせ★

こんにちは、TOMOKOです。
父島でも涼しい風を感じるようになりました。秋の風物詩であるオガサワラゼミの声が賑やかです。
それでも海の中は28℃もあり、青がいっそう濃く、最高のスイム環境です。
あと一ヶ月はこんな海況が続くはずです。

★ミナミハンドウとハシナガ・その1★
ご存じのように、小笠原の沿岸域にはミナミハンドウイルカとハシナガイルカが生息しています。ミナミハンドウイルカはヒトに慣れやすい性格で、ドルフィンスイムで遊んでくれることがよくあります。ハシナガイルカはシャイな性格のため、ヒトが海へ入ってくるのは好みません。先日、まさにこの性格の違いを実感させられました。
某日、ミナミハンドウとハシナガがそれぞれ20~30頭ほどの混群に出会いました。このような場合はミナミハンドウを目指してエントリーしますが、たまたまハシナガも近くにいることがあります。このときも、海へ入ると、思いがけずハシナガの群れが下を泳いでいました。でも、「あ、いる。」と認識できる程度で、こちらに目もくれずサーッと泳ぎ去ってしまいました。
相変わらずヒト見知りだなとハシナガの後ろ姿を見送っていると、いきなり横からヒョイと顔を覗き込まれました。驚いて振り返ると、ミナミハンドウイルカです。ハシナガの後ろからミナミハンドウがやってきていたのです。近付いて来たミナミハンドウは、そのままヒトと目を合わせながら並走して泳ぎます。その合間に、くるりと回ってくれることもありました。
同じ海域に住み、同じ「イルカ」なのに、種によってこんなにも性格や行動が違うんだと改めて感じるスイムとなりました。
皆さま、もしハシナガを水中で見かける機会があっても、どうぞ追いかけずにそっと見守ってください。追わずにいたら、案外、気を許したハシナガがぐるっと回ってくるかもしれません。
それぞれを見分けられないかたは、遠慮なくスタッフにお尋ねくださいね。(NAOMI)

★ミナミハンドウとハシナガ・その2★
ハシナガはシャイでミナミハンドウはヒトに慣れてる、と前述しましたが、とは言え、何事にも例外はあります。別の夏の日、その例外がありました。
他船から混群の情報があり、そちらに向かうとハシナガイルカが100頭ほどいました。けれど、ミナミハンドウイルカをなかなか見つけられません。すでに分かれてしまったのかと思い始めたとき、ようやくミナミハンドウの背ビレを見つけました。
でも、このミナミハンドウは神経質なようで、見つけてもすぐに潜ってしまいます。どうにかタイミングを合わせて海に入りましたが、すぐ向きを変えてしまいます。ハシナガと一緒にいるミナミハンドウは、時々、このようにそっけない振る舞いをします。まるで自分もハシナガだと思ってるようです。
結局、水中でミナミハンドウを見られず、船が迎えにくるのを待っていると、なんとハシナガの群れがこちらにやってきました。そのまま方向を変えずに目の前を泳いでいきます。気が付くと、いつの間にか前後左右ハシナガイルカに囲まれていました。ミナミハンドウのような近付きかたはしませんが、浮いているヒトを気にしていない様子です。
彼らのシャープな体形、くっきり三色に分かれた体色、知的な印象を与える目元の黒ライン。なんて美しいのでしょう。ハシナガは、泳ぎ去ったと思っても、またUターンして戻ってきました。
前もってご注意した「もし水中でハシナガを見られても、彼らに向かって泳がないように。ただ浮いてるだけでウォッチして下さい。」ということを皆さまが守って下さったので、ハシナガも安心していたのでしょう。水中に響く賑やかなイルカの声を聞きながら、リラックスモードのハシナガを観察できた、貴重な機会でした。
いつもと逆の反応を示したミナミハンドウイルカとハシナガイルカたち。気分屋の彼らに、ヒトはいつも振り回されっぱなしで、そのときどきで合わせるしかないのでした。(NAOMI)

★カメスイム★
ツアーではカメを見つけることもあります。
春になると、アオウミガメは繁殖のために本州沖から生まれ故郷の小笠原へ帰ってきます。交尾を終えた雄ガメはやがて去りますが、雌ガメはしばらく残って、砂浜に上陸、産卵します。
そんな雌ガメも、秋には激減します。それでも、時々、走る船から海面にぽっこり浮かぶ甲羅を見かけます。また、イルカと泳いでいるときに、水中にホバリングしているカメがいることもあります。思わず、イルカそっちのけでカメに寄っていったりして。だって、海の中ではイルカよりカメの方が珍しいのですもの。
9月某日、海面に浮いているプラスチックケースがアヤシイ動きをしているぞと近付くと、アオウミガメが頭を突っ込んでいました。どうやら、ケースに付いている海藻か何かを食べているようです。前ヒレをバタバタさせながら頭を入れたままなので、もしかして嵌まってしまったのかと心配しだした頃、ようやくケースから離れました。
嵌まったのではないのにほっとしましたが、カメは名残惜しそうにまだ留まっています。そのチャンスに、海に入ってみることにしました。そっとエントリーして近付くと、不思議そうにこちらを見てから、おもむろに向きを変えました。
それでもやはり動きがおっとりしてるので、皆さま、すぐ近くまで寄ることができました。カメは大きく尾も長く、見事な成熟雄です。この時期にまだ小笠原にいるなんて、ずいぶんのんびり屋ですね。
アオウミガメはヒトを尻目にゆうゆうと泳ぎ、やがて去りました。間近でじっくり観察できた、まれなカメスイムになりました。(TOMOKO)

★ニセ子イルカ?★
ドルフィンスイムでは、子イルカにもよく会います。母イルカにぴったり寄り添ったきりの子もいれば、好奇心旺盛にヒトに近付いてくる子もいます。愛らしい子イルカは、いつでも人気者です。
でも、オトナばかりの群れなのに、お客様が「小さい子イルカがいた!」とおっしゃることがあります。実は、それは、子イルカではありません。
そのニセ子イルカの正体は、「コバンザメ」というサカナです。サメやエイの体表にくっついたり、イルカにくっついたりしています。
なぜ「くっついている」と表現するかというと、このコバンザメは頭の背面に吸盤を持っているのです。その吸盤で大型生物に吸いつき、サカナなどの食べこぼしが流れてくるのを待っています。自力でエサを獲らずに自分より大きな種に任せるとは、なんて他力本願な生き方でしょう。でも、これが彼らの選んだ戦略なのです。
イルカにコバンザメがぴたっと張り付いていると、初めてのかたはてっきり子イルカかと思われるようです。
このコバンザメに着目して観察するのも、案外面白いです。まったくコバンザメを付けていないイルカもいれば、3~4尾つけているイルカもいます。後者のイルカは、食べこぼしをよくするのでしょうか? 食べかたがへただったりして?
コバンザメの大きさもさまざまで、驚くほどの特大サイズもいれば、見落としそうな極小サイズもいます。より良い位置に移動しようとイルカの体表を動き回るコバンザメもいます。イルカの眼を覆うように付いているコバンザメには、さすがにイルカが嫌がって落とそうとします。まさに「目の上のたんこぶ」状態で、見ている私たちもおかしかったり、イルカに同情したり。
小笠原でイルカについているのは、たいていが「クロコバン」という種です。彼らは、イルカのみならずヒトに吸い付くこともあるそうですので、うかつに近付かないよう、お気を付けください。
本物の子イルカほどではないかもしれませんが、よく見るとその顔は愛嬌があります。ユニークなコバンザメにもぜひご注目ください。(NAOMI)

★台風来襲★
夏から秋のシーズンに気になるのが台風です。今年も免れることはできませんでした。
7月末に発生した台風5号により、29日東京発のおがさわら丸は欠航となってしまいました。毎年いらしてるリピーターさんグループも涙を呑みました。
さっさと遠くを通過するはずだった5号は、小笠原を目指すかのように途中で進路を変えました。まさか、と思っていたのに、まさに、直撃コースです。リピーターさんの代わりに小笠原観光なんて、しなくていいのに。
そして、8月末に発生した台風15号に至っては、なんと小笠原の真上で停まってしまいました。近辺を行ったり来たりしたおかげで、台風の目に3回入るという珍しい現象となりました。東からの強風が西からに変わっても吹き続け、多くの木々が潮をかぶって枯れてしまいました。南島のカツオドリのヒナは、風に煽られて3分の1が命を落としたとのことです。確かに、台風後に行った南島では、あれほど見られた崖のヒナたちが少なくなっていました。
多くの観光客や島民を泣かせ、あちこちにその爪跡を残した2つの台風ですが、人的被害がなかったのはせめてもでした。
もちろん、台風にもいい面があります。海がかき回されて、高かった水温がいったん落ち着き、サンゴ白化の心配はなくなりました。また、深海へも酸素の供給が行われているそうです。台風がなければ、小笠原のような離島では水不足もいっそう懸念されます。
とはいえ、シーズン中の台風は辛いです。なんとか上手くオフシーズンにちょっとだけ寄ってくれればいいのに、なんて虫のいいことを考えてしまいます。(TOMOKO)

★Tomocolumn 36「群れで生きるマッコウ」★
夏から秋は、マッコウクジラのシーズンでもあります。小笠原の外洋域で会うマッコウクジラは、群れで動く繁殖集団です。1頭のブローを見つけると、たいてい他のクジラが周りにいます。
バラバラでいるように見えるマッコウたちでも、浮上のタイミングを合わせている印象があります。離れてはいても、群れとして多くの行動を共にしているのでしょう。
ときに、10頭以上ものマッコウが密集してひとかたまりになります。「マッコウ玉」と呼ぶこの状態での行動は、実に面白いです。
しきりに互いの体をこすり合っていることがあります。海面には、剥がれ落ちたマッコウの皮膚片がいくつも散っています。
かと思うと、浮かんでいるプラスチックケースやベニヤ板で遊ぶこともあります。口を開けて囓ってみたり、仰向けになって自分の上に乗せようとしたり、横向きで胸ビレで触ろうとしたり(その短い胸ビレでは無理だよ~)。
遊ぶだけではなく、生まれて間もないと思われるベビーを集団で守ります。ベビーのすぐ横にいるのが母クジラではなく雄クジラのこともあるので、群れ全体で見守っているのでしょう。ベビーがフラフラとあらぬ方向へ泳いでいくと、すぐに誰かが連れ戻しに行きます。
また、激しく頭を突き出してぶつけ合ったり尾ビレを振り回したりするのは、群れの中での順位を争う力比べでしょうか。
以前、某局の取材で、マッコウクジラにロガーを着けたことがありました。行動を探るために、カメラと記録計を吸盤でマッコウの体表に着けるという試みでした(OWAの許可のもとで行いました)。
1頭のマッコウが船の横でおもむろに潜ろうとしていたので、チャンスとばかりにロガーを着けました。とたん、吃驚仰天したマッコウが大暴れ! 尾ビレを思い切り海面に叩きつけたので、私たち全員、頭からウンチまみれの水しぶきを浴びてしまいました。
それでも、確かにロガーは着いたはず、と誰もが成功を信じた次の瞬間、思いがけない光景が! あちこちから、マッコウクジラがこちらめがけて猛スピードで集まってきます。え、こんなにマッコウがいたの?と思うほど多くのマッコウが、それぞれ波を蹴立てて凄い勢いでやって来ました。こんなに早く泳げたの!?
集まったマッコウたちが先ほどのクジラをとり囲んだと思ったら、呆然と見ている私たちの目の前にぷかりとロガーが浮かびました。なんと、駆けつけた仲間のクジラが、吸盤で着けたロガーを外したのでした(そのさまは、ロガーのカメラが撮影していました)。
たぶん、ロガーを着けられて驚いたマッコウは、悲鳴を上げたのでしょう。それを聞きつけた回りのクジラたちが、仲間の一大事!と大急ぎで助けに来たのでしょう。まさに、群れで行動してるマッコウならでは、です。
そういえば、捕鯨ではマッコウを1頭傷つけると、そのクジラを守って他のクジラが集まり、「菊の字陣形」をとると聞いてます。それが仇となって、多くのクジラがまとめて捕獲されてしまうとか。いかにも、マッコウならありそうです。
私たちの知らないところでも、マッコウはさまざまな社会的行動をとっているのでしょう。群れの中でそれぞれの役目を果たし、互いに助け合って生きているのでしょう。
ますます興味深く、もっともっと知りたいものです。(TOMOKO)

★新米スタッフから★
はじめまして、SYUHEI(周平)です。
2016年9月からの一ヶ月間、Sae-Tacで研修を受け、17年3月末からスタッフとして働いています。地元の大阪から約30時間かけて、さぁ、新天地の小笠原での生活が始まるぞ!と気合いを入れた日から、あっという間に半年が経ちました。
自分は動物が好きで、高校や専門学校で飼育について勉強してきました。でも、飼育下の動物たちは、人間に危害を加えないよう調教されていたり、囲いの中で安全性を考慮されていたりと、その動物本来の姿ではないような気がしていました。イルカも、そのように飼育されている動物の一種ではないでしょうか。
しかし、小笠原でのイルカは、野生です。餌をまいて呼ぶわけでもありません。どこにいるのか、何をしているのか、全てがイルカの自由です。
野生の彼らとの出会いは本当に素晴らしいです。彼らから近づいてきてくるくる回ってくれたり、嫌がらずに並泳してくれたりと、水族館では見ることのできない光景が広がっていました。
この半年間で、ここが成長したと自信を持って言える部分はまだなく、自分に出来ることも多くはありません。でも、一つ一つ着実にやっていきます。自分らしく、日々精進します。
イルカとお客様の素敵な出会いをサポートしたいという気持ちは誰にも負けません。小笠原のイルカと多くの人が安全に楽しめるよう、1日でも早く頼れるスタッフになりたいと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。(SYUHEI)

★寄港便と縁結びツアー★
9月最終便の館山寄港便では、大勢のかたが来島されました。
今後もおがさわら丸の寄港便が予定されています。お住まいによってこちらが便利というかた、2箇所をいちどきに観光しようというかた、お見逃しなく!
なお、寄港便の父島着と東京着は30分遅延となりますので、ご注意ください。

 大島寄港:2017年10月18日(水)東京発便

また、小笠原海運と小笠原観光局主催「縁結びツアー」も開催されます。
これは、20才から49才までの独身者限定の婚活ツアーです。
乗船後の「(男女別)魅力アップセミナー」から始まり、船内や島内でのさまざまなイベントに参加、「縁結び相談コーナー」を設け、帰りの船上での「告白タイム」まで、盛りだくさんです。
島での最後の夜に行われる、おが丸での船上パーティのあとは獅子座流星群を観望、なんて、さぞ雰囲気満点でしょう。もう、ご縁が結ばれること、間違いなし!? 
興味のある方は、小笠原海運のサイトをお訪ね下さい。

 縁結びツアー:11月15日(水)東京発便

★お知らせ★
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