小笠原の水先案内人

vol.47 2019年04月18日配信

Contents ★小笠原海運50周年★
     ★子クジラたち★
     ★ホワイティ★
     ★春先のスイム★
     ★ご近所付き合い★
     ★おがさわら丸予約方法の変更★
     ★Tomocolumn 39「あちこちのネコ事情」★
     ★新人からのご挨拶★
     ★お知らせ★

こんにちは、TOMOKOです。
ザトウシーズン中の小笠原です。今年もたくさんのザトウが生まれ故郷に戻ってきてくれました。
小笠原では去年から雨が少なくて、父島のダム貯水量は20%台となってしまいました。海水の淡水化装置も稼働してますが、それでも使用量には追いつきません。しばらくは台風や大雨の予報もなく、なんとか梅雨までもって欲しいところです。
来島される観光客の皆さまにも節水のご協力をお願いしています。

★小笠原海運50周年★
小笠原諸島が日本への返還50周年となった昨年は、イベントがいろいろ行われました。
2019年は、おがさわら丸を運航している小笠原海運の50周年です。今年も、それを記念したさまざまな企画があります。
おがさわら丸では、館山寄港便・久里浜寄港便・大島寄港便以外に、「女性限定ボニンセラピーツアー」「犬と一緒にワンだふるツアー」「サイクリングツアー」などがあります。結婚を予定されてるかたには、「おが丸で挙式と新婚旅行」というブライダルツアーはいかがでしょうか。「学生ルームシェアパック」「贅沢ふたり旅」「自由気ままひとり旅」「歴史探訪と感動の6日間」なんてコースもあります。
おがさわら丸内でも、「搭乗券ラッキーナンバー」「スタンプ&クイズラリー」「隠れおがじろう船長を捜せ」というイベントをやってます。海運の創立記念日にあたる9月10日生まれでしたら、ぜひ「一緒に灯そう、ケーキキャンドル」にご参加下さい。
グッズも見逃せません。アウトドアブランドのCHUMSとコラボしたTシャツやマグカップがあります。CHUMSのシンボルであるカツオドリが、おがさわら丸やイルカと一緒にいる絵柄です。50周年記念ロゴ入りタオルもロゴ入り金のギョサンもいいですね。色鉛筆やボールペンは、お土産にも良さそうです。いずれも、おがさわら丸の売店で販売しています。
あなたはどのイベントに興味がありますか? 詳しくは、海運のサイトへどうぞ。
ちなみに、Sea-Tacは今年で26周年となります。50周年は、まだまだだいぶ先ですね。(TOMOKO)

★子クジラたち★
ザトウシーズンも半ばを過ぎて、父島の海では親子のザトウクジラを見る機会がいっそう増えています。
今シーズン産まれの子クジラたちもずいぶん大きくなりました。生まれて間もない頃には母クジラが必ず隣で子クジラを守っていましたが、今はもう、母クジラから離れてひとり遊びをしています。
子クジラがブリーチを始め、跳びながらこちらに向かって来ると、ハラハラします。オトナだったら船の存在を充分に承知しているだろうけど、子クジラが夢中になったら周りなんて見ていないかもしれないからです。お互いのために船にはぶつからないでよ、と祈ってしまいます。
または、1頭の子クジラのアクティブな姿をウォッチしていたら、反対側でも別の子クジラが暴れ出して、どちらも気になりきょろきょろしてしまうこともあります。子クジラは、ブリーチ以外にも尾ビレや胸ビレを振り回して、なかなかいっちょ前の大きなしぶきを上げるようになりました。
子クジラのブリーチは何回も繰り返すのでウォッチしやすい一方、オトナほどの滞空時間はなく一瞬で落ちてしまうので、撮影するのは難しいです。右へ行ったかと思ったら左へ戻ると、動く方向も定まりません。跳んでるうちに、次第に勢いがなくなり、ブリーチではなくヘッドライズになってしまう、そんなさまも愛らしいです。
大騒ぎしていた子クジラが、潜っていってからしばらく浮上して来ないのは、きっと水中で母クジラのおっぱいを飲んでいるのでしょう。さすがにくたびれたかな。一休みしたら、また元気な姿を見せてくれるかしら。
育児真っ最中の母クジラの体力にも脱帽です。小笠原にいる間はまったく餌を食べずに出産と子育てをしてる母クジラは、だいぶ痩せてしまったはずです。活発にはしゃぎ続ける子クジラの姿を見ては、こんなに運動したらさぞたくさんおっぱいを飲むことだろう、母クジラはいっそうお腹が空くのではないかと、気を回してしまいます。母子揃って北の海まで辿り着くのは、どれくらいのちでしょうか。あちらで、母クジラにはたっぷり栄養を取ってもらいたいところです。そして来冬、太った母クジラとひとまわり大きくなった子クジラとで、また小笠原に帰ってこられますように。
近年の日本近海でのストランディング例では、8mくらいのザトウが多いです。たぶん、1歳になったザトウが、故郷の海へ戻る途中で母から離れて迷子になってしまうのでしょう。この「初めての里帰り」は、彼らにとって大きな試練なのかもしれません。
子クジラくんたち、どうか無事に長旅を乗り越えてね。次の冬にも小笠原の海で会おうね。(TOMOKO)

★ホワイティ★
イルカやクジラを見ているとき、水面下に水色の輝きが現れたことはありませんか? スピリチュアルなお話ではありません。実はそれは、彼らの白い体色の部分が、海の青を反射して水色に見えているのです。
この光景がよく見られるのは、例えば、ハシナガウォッチ中です。ハシナガイルカは腹部が白色のため、水中で仰向けになると水色に輝いて、目立ちます。
この現象はザトウクジラでも起こります。たいていのザトウは胸ビレの水面に近い上側が黒く下側が白いのですが、中には、両面ともに真っ白な個体がいます。そんな両面とも白いクジラは、「ホワイティ」と呼ばれています。比率としては全体の3割くらいでしょうか、多くはありませんけど、特に珍しいというほどでもありません。
ホワイティをウォッチしていると、胸ビレが反射する光で、浮上してくる位置を船上の私たちに教えてくれます。輝く水色が色を増したと思ったら、そこから黒い巨体のクジラが高くブローを吹き上げながら現れます。なんて神秘的な光景でしょう。
呼吸と呼吸の合間の浅い潜水では、その姿を水面下に追い続けられます。カメラを構えてるかたもシャッターチャンスを狙いやすいのではないでしょうか。
メイティングポッド(繁殖集団)の中にホワイティがいると、他のクジラを追いかけるさまや牽制するさまがわかり、更に迫力満点です。
なにより、その水面下で輝く光は、えもいわれぬ美しさで私たちの目を惹きつけて止みません。
水面下の水色の光を追い、はきとは見えぬその全身や動きに思いを馳せる。ホワイティに会ったときならではの楽しみです。(NAOMI)

★春先のスイム★
1月1日が海開きの小笠原ですもの、一年中泳げます!・・・と言いたいところですが、率直に言って、冬や春の海はそれなりに寒いです。水温は21℃くらい、水着だけではさすがに冷たく、ウエットスーツが欲しいです。
とりわけ寒さを感じるのは、水中よりもむしろ泳いだあとの船上でしょう。濡れた体に北風が吹き付けると、震えあがってしまいます。さっさとスーツを脱いで、乾いた服に着替えたいところです。暖かい上着も必携で、肌を温めてくれるフリースと風を通さないボートコートの両方がお薦めです。
そんなに寒い時期だったら泳がない方がいいじゃないの。・・・そうおっしゃるかたもいらっしゃるでしょう。
はい、寒いのが苦手なかたは、どうぞ船上からのウォッチに専念なさって下さい。ぬくぬくと厚手の上着にくるまって、舳先から下を覗いていれば、充分にイルカが見えるはずです。
ただ、ハードリピーターさんの中には、わざわざこの時期を選んでスイム目当てでおいでになるかたもいらっしゃいます。それは、どうして?
実は、寒いからこそ、夏に比べて観光客が少ないわけです。イルカへのスイムでは、同時に入るヒトが少ない方が、イルカがヒトを脅威と感じずによりリラックスします。イルカだって、大勢で追いかけられ続けるのは避けたいですからね。
また、春先はイルカが大きな群をつくる傾向があります。20頭・30頭・40頭という数でまとまっています。海に入ると、周り中がイルカだらけ、次から次へとイルカがやってくる、まるでイルカの川です!
数が多ければ、その中にヒト好きなイルカがいる確率も高くなります。たくさんのイルカたちに対してほんの数人だけで、存分にスイムを楽しめるチャンスが多いという、贅沢な時期なのです。
また、ザトウクジラのシーズンでもあるので、イルカと泳いでるときにザトウのソングが聞こえてきます。今、同じ海の中にいるザトウの存在を感じつつ、目の前のイルカと共に遊ぶひとときは、なんて幸せなのでしょう。
加えて、湾内でマンタをよく見る時期でもあります。夏に遭うマンタは水面下でホバリングしていますが、春のマンタは採餌をしています。海面を割って、ぷっくり膨れた背中が現れています。多くのプランクトンを獲ろうと、ぐるぐる水中で旋回を続けます。あまり横への移動はしないので、水中に入って観察することも可能です。採餌マンタへのスイムは、春ならではです。
泳いだあとの肌寒さをさておいても、この時期ならではのスイムの魅力も捨てがたいのでした。(TOMOKO)

★ご近所付き合い★
海には、イルカやクジラ、サカナ、カメ、マンタ、多種多様な生物が暮らしています。それぞれが協力したり、争ったり、命のやり取りをしたり、互いに関わりつつ生きています。
ドルフィンスイム中にも、イルカ以外の生きものに会うことがあります。ロウニンアジがイルカのおこぼれに預かろうとついてきたときもありました。イルカの横を、エイやカメが泳ぎ去っていくときもありました。海の中の彼らは、通行人A・Bのように、おおむねそのまま通り過ぎていきます。でも、好奇心旺盛なイルカは、時に、そんな通行人たちにもちょっかいを出したくなるようです。
先日スイムしたイルカの群れは、とてもフレンドリーでした。子イルカを含む4頭で、ヒトとよく絡みました。行ってしまったと思っても、戻ってきては、また遊んでくれます。
そこにアオウミガメが現れて、私たちの間を横切ろうとしました。すると、それまでヒトと回っていた子イルカがカメへ向かって一直線、そのクチバシでつつき始めたのです。それにつられたのか、アダルトたちもカメに向かっていきました。4頭でカメを囲み、それぞれが背中やお腹をつつきます。カメはさすがに嫌がって、ヒレや頭をしきりに振って逃れようとしています。イルカがつつき、カメが嫌がる。その状態のままで泳ぎ去っていく彼らに、ヒトの私たちは置いてけぼりにされてしまいました。さて、あのあとはいったいどうなったのでしょうか。
同じ海に住まうもの同士、私たちが見ていないところで、きっとさまざまなご近所付き合いがあるのでしょう。彼らにとって良いことも悪いこともあるでしょうけど、私が言えることは、このときのカメさん、お気の毒さまでした。(NAOMI)

★おがさわら丸予約方法の変更★
混雑時のおがさわら丸乗船券を確保するのに苦心されてるかたも多いことでしょう。
今年のゴールデンウイークは10連休になるので各観光地が人気のようですが、小笠原も例外ではありません。乗船券一斉発売日の4日前から、東京の海運事務所の前に購入希望者が並び始めていたとか。行列は日を追うごとに長くなり、結局、行列したにもかかわらず乗船券が購入できなかったかたも大勢いらしたそうです。
そのため、海運では一斉発売日の予約方法を変更しました。来店予約は廃止し、電話かインターネットでの予約のみとなります。おが丸パックは、インターネット不可で、電話受付のみです。
これはこれで電話やネットが果たして繫がるかとハラハラしそうですが、行列に並ぶほどの時間や労力は使わずにすみ、かつ公平ではあるでしょう。
新たな販売方法をどうぞお忘れなく、皆さま、夏のご予約をしっかり確保して下さいますように。(TOMOKO)

★Tomocolumn 39「あちこちのネコ事情」★
以前、こちらのコラム#25で小笠原のネコたちについてご報告しました。
小笠原でノネコによるトリの被害が問題になり、稀少なトリたちを守ろうとノネコの捕獲が始まったのでした。とはいえ、ノネコにも罪はありません。捕えたノネコたちを殺処分するのではなく、ノネコにとっても良い生息環境を与えようと、東京都獣医師会さんのご協力でノネコを馴致し、それぞれの里親を捜していただいています。#25を書いた時点で300頭だった元ノネコのイエネコたちは、その後も増え続け、すでに800頭を越えています。野生のノネコ時代には厳しい環境で痩せ細っていた彼らは、イエネコとなった今はふっくらと太り、飼い主さんに甘える柔らかな表情をしています。
また、そうして捕獲を続けてきた成果は確実に出ています。全島で40羽に減っていた絶滅危惧種のアカガシラカラスバトは、今では400羽に増えました。その大きな理由は、ノネコによる被害が減ったからだと考えられています。これだけ明らかな成果がでたのは、協力して下さった各関係団体や組織、行政のおかげであり、島民としても有り難い限りです。
とはいえ、ノネコを全て捕りきるのはなかなか難しいようです。トラップシャイと呼ぶ、警戒心が強くて捕獲カゴには入らないノネコが残っていて、繁殖もしています。捕獲側は、カゴを仕掛ける位置、目立たない置き方、餌の種類など、さまざまに工夫していますが、ノネコもさるもの、そんなヒトの目論みを見抜いてるようです。
なんとしても全頭捕獲しなければ、いつまでもトリたちの危機はなくなりはしません。捕獲側の努力は今も続いています。
実は、同様にノネコの被害が問題になってる場所は他にもあります。御蔵島でもオオミズナギドリを守るために、ノネコの避妊去勢手術に続いて、島外搬出が始まってます。御蔵のオオミズナギドリは、推定11万羽とのことですので、小笠原のアカガシラカラスバトとは桁が違いますが、それでも300頭いるというノネコの被害が問題となっています。このままではオオミズナギドリの生息が危ぶまれるということで、やはり各団体の協力を得ながら、捕獲が行われています。小笠原でお世話になってる東京都獣医師会さんが、御蔵島でも助けて下さってるようです。
また、奄美大島でも、アマミノクロウサギの生息を守るためにとノネコの捕獲を始めています。但し、先行している東京の島とは異なり、奄美のノネコは殺処分がほぼ決まっているそうです。1万5千~4万羽生息しているアマミノクロウサギの保護のために、3000頭のノネコを殺処分する予定とのことです。
これについては、なぜ馴致して里親を捜す方法をとろうとしないのか、そもそもクロウサギに対するネコ圧が不確定のままで3000頭を捕獲する必要はあるのかと、保護団体が殺処分に反対しています。
現地島民の中でも、ネコの捕獲によってネズミが増えたら、それを目当てにハブが民家に近付くかもしれないからと捕獲に反対とか、クロウサギだけでなく稀少なネズミも襲っているネコを捕獲に賛成とか、すでに計画が始まっている今でもいろいろな意見があるようです。
私自身は現地に行っていないので、奄美の事情は聞いてる限りではありますが、果たして、小笠原や御蔵が「ネコもトリも救いたい」と努力したように、上手な対処方法はないのでしょうか。どの生きものも殺処分は避けたいところですが、とりわけノネコはもともとは人間がペットとして持ち込んだもの、いわば、ノネコをつくったのは私たちヒトなのですから。
自然保護が謳われる機会が増えた近年、以前よりも野生生物とヒトとの関わり方に焦点があてられる機会も増えています。日本人はどうも動物を擬人化しすぎる傾向があるようにも感じていますが、それにはまた、私たちヒトの都合の良いように動物を解釈してしまう危険性もあります。
善し悪しはさておき、私たちヒトこそが動物たちとの関わり方の選択権を持っている現状です。だからこそ、自然やそこに棲む生きものたちとの関わり方をしっかり見据え、理解し、相手を尊重して、より適切な選択をする責任があることを自覚するべきでしょう。
いつの場合も、ヒトとして賢い選択ができるよう、心から願っています。(TOMOKO)

★新人からのご挨拶★
はじめまして、新米スタッフのKOKOROです。海のない奈良県出身です。2015年の初来島時にSea-Tacのツアーに参加して以来、小笠原の海とそこに住む生き物たちの魅力が忘れられず、3年9ヶ月勤めた会社を辞めて、今年2月に引っ越してきました。観光客として来ていたころには見つけきれなかった小笠原の素敵なところがたくさん見えてきて、充実した日々を過ごしています。
幼いころから動物好きで、愛玩動物(実家の愛犬)、実験動物(霊長類研究所)、家畜動物(大学馬術部、Animal Welfareに配慮した畜産)、野生動物(ボルネオのオランウータン、御蔵島のイルカたち、トンガのザトウクジラ)と、さまざまな動物たちに出会い、接してきました。
動物たちからも、海からも、それらに関わる方々からも、私の一生の財産となるものを多く与えていただいた分、今度は私が少しでも何かをお返しする側・提供する側に回れたらと思っています。まだまだ未熟で、学ぶことばかりの日々ですが、皆さまにイルカやクジラたちとの素敵な出会いを楽しんでいただくサポートができるよう、精一杯頑張っていきます。
小笠原で皆さまにお会いできる日を楽しみにしています。どうぞよろしくお願いいたします。(KOKORO)

★お知らせ★

ニューズレターをサイトにアップしたとき、希望されたかたにメールでお知らせしています。新たにお知らせを希望されるかた、お知らせを停止されたいかたは、下記まで、お名前・アドレスと共にご連絡ください(このお知らせへの返信にされると、全員にそのメールがいってしまう可能性があります。お避け下さい)。
宜しくお願いします。

   info@sea-tac.jp

PAGETOP
Copyright © Sea-Tac All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.