メキシコのバハカリフォルニア半島の南東に、ラパスという町があります。この近くにはアシカのコロニーがあって、スクーバダイビングかスノーケリングで会えます。
日本からは、ロサンジェルス乗り換えでラパスに行きます。観光客の多いラパスの町は歩きやすく、スペイン語圏なのに片言の英語で充分に通じます。町中の小さな食べものやでも、メキシコペソでなくアメリカドルが通用し、かつレートも良心的でした。観光客として過ごしやすい町です。
ラパスが面しているコルテス海は、ダイビングでハンマーヘッドシャーク・マンタ・ジンベエザメの大物からハゼなどの小さいものまでが楽しめる豊かな海ですが、今回の私たちの目的は、とにかくアシカです。アシカは通年見られますが、とりわけ10月には、その年生まれの子アシカたちが親から離れて泳ぎだし、ヒトにも興味を持って近付いてきます。

2000年10月23日〜30日

私たちがお世話になったのは、BAJA QUESTというダイビングショップです。朝7時半にホテルまで迎えに来てくれて、港に向かいます。乗船後、自分の器材を確認したら、走る船の中で朝食です。トルティーヤにヨーグルト・フルーツ・ジュース・コーヒーなど。食事を済ませて、クルーズを楽しみ、ダイビングポイントまでは2・3時間かかります。ポイントは、その日の海況やお客さんの希望などによって変わりますが、私たちは、選択の余地があるときはいつもアシカのポイントを希望しました。
そのうち、子アシカが1頭2頭と、おっかなびっくり近付いてきます。すぐそばまで来た子アシカに手をひらひらさせて誘うと、面白がって、はぐはぐ甘がみしてきます。指先を噛ませながらその顎に触ると、まっすぐで堅い毛並みが心地よいです。こちらに気を許した子アシカは、手に飽きると、スノーケルやフィンにも噛みついてきて引っ張ります。引っ張りながら、大きな黒い眼でこちらを上目遣いに見ています。だめだよーなんていいながら私も引っ張り返して、まるっきり子犬とじゃれてる楽しさです。
中には臆病な子アシカもいて、人間に触ってみたいんだけど怖いなぁ、どうしよう、でもやっぱり触りたい、と、手がやっと届くかどうかの距離をうろうろしています。それを、大丈夫、怖くないから触ってごらん、とあやしていると、思いきったようにこちらの指先を一噛みして、きゃーっ、やっちゃったーっ!と慌てて逃げていくさまも愛らしいです。
私たちは水中でゆっくりアシカと向かいたかったのでスクーバダイビングを選びましたが、スノーケリングでアシカと会うことも可能です。子アシカたちの遊び場になっている洞窟の中には、水面にスノーケラーが3人浮いてました。子アシカは、時々下から浮いていっては彼らをつついていました。
こうして、午前中に2本ダイビングしたあと、昼食です。その日によってトルティーヤ・スープ・サラダ・シチュー・雑炊などで、暖かいのが有り難く美味しかったです。飲み物やおやつもいつも用意されていて、気の向くままにつまみます。昼休憩のあと、午後にも1本潜って、その日のダイビングは終了です。遠いポイントのときは、2本で終わることもあります。
私たちは5日間で12本のダイビングでしたが、先のロスイスローテスに5回、サン・ラファリエートという別のアシカポイントに1回、潜りました。サン・ラファリエートには、若雄のアシカの群がいます。水面でのんびり寝ていましたが、そーっと近寄っていくと、こちらに気付いたとたんに大騒ぎ。ばたばたばたっと身を翻して逃げてしまいましたが、やがて警戒しながら近付いてきます。子アシカよりずっと大きくて、生殖器もはっきりわかります。動きもしなやかでカッコ良く、いかにも野生のいきものらしい群れでした。アシカポイントの他には、エル・バホでハンマーヘッドシャークの群に遭ったり、イスラ・バジェーナでハゼを見たり、ファン・ミンで沈船探訪をしたり、スワニーリーフでガーデンイールとにらめっこしたり。それぞれのダイブを楽しみました。
ダイビングのあと、港に戻るまで、デッキでのんびり寛いで戴くビールの味は格別です。途中で、ナガスクジラの親子に会ってしばらくウォッチしたこともありますし、ハンドウイルカを見付けてスイムにチャレンジしたこともあります(水中では見えませんでしたが)。希少なオサガメが水面にいたり、あちこちでマンタがジャンプしていたり、油断できません。もちろん、心地よい風を受けながらゆっくり昼寝のひとときをむさぼるのもいいでしょう。

帰港後はホテルに送ってもらい、シャワーを浴びてから、町をぶらついて買い物や夕食をとります。ホテルの前の海に沈む夕日がとても綺麗でした。その夕日を見ながら飲むカクテルも最高です。
シーフードも美味しいし、パスタが絶品の店も見付けたし、存分に満喫したラパスでのダイビングでした。