中米にあるドミニカ共和国の北100キロに、シルバーバンクと呼ばれる浅い海域があります。平均水深30メートルくらいのサンゴ礁です。ここは大西洋のザトウクジラの繁殖海域で、1月から5月の間、多くのザトウたちがやってきます。
シルバーバンクでは、観光客が水中に入ってクジラを見ることが許されています。毎年、3隻のみ(年によって変動があるかもしれません)が、政府の許可を受けてホエールツアーを催行しています。それぞれ20〜30人の定員で、1週間のクルーズトリップです。そして、政府の役人が、適切なツアーを行っているか確かめるために、その3隻に順番に同乗しています。1986年にはクジラなど海棲哺乳類のサンクチュアリに指定されており、国がかりで大切に守っている海です。
クルーズは、ドミニカ共和国のプエルトプラタから出港、シルバーバンクに停泊して4日間を過ごします。実際にクジラウォッチするときは、小さなゴムボートに乗り換えます。
クジラのいる海でのスクーバダイビングは禁止で、スノーケリングに限ります。また、水面からの観察のみとされていて、潜ることや追いかけることは禁じられてます。違反するとツアー許可が取り消しとなるらしく、これについてはかなり神経質なくらいにキャプテンが注意してました。

2005年1月28日〜2月7日

私たちは、成田からロサンジェルスで乗り換えて、マイアミに一泊、翌日、ドミニカ共和国のプエルトプラタに入りました。ここでクルーズ船に乗船、まずはツアー参加手続きを済ませ、ガイダンスを受けます。
キャビンは二人部屋で、ダブルベッドか二段ベッドです。洗面台が付いていて、お手洗いとシャワーは共同です。桟橋に留まったままキャビンで一夜を過ごし、翌朝早くに出港しました。
6時から船は走り出しましたが、折悪しく風が強く、想像を超える揺れです。たまたま私たちのキャビンが舳先にあったせいもあり、とにかく大きく揺れて持ち上げられては、ドーンッという音と共に叩きつけられます。時たま、メキメキッという音も聞こえて、どこかにヒビでも入ったかとビビリます。とても立ってられる状態ではなく、ベッドに横になって木枠にしがみついてます。それでも、うねりで落とされるたびに打つ腰は痛み、胃はひっくり返り、ひたすら時が経つのを待つのみ。いやぁ、こんな酷い揺れは、ウン十年の海経験でも初めてでした。南極の悪名高きドレーク海峡のほうがずっとましでした。
朝食抜きのまま、ようやく10時過ぎに目的のシルバーバンクに到着しました。速度が落ちて、やっと立ち上がることができます。早速トイレに行くと、皆さまご同様で、ドアの前には行列でした。隣のキャビンのでっかいカナダ人男性が、「凄い揺れだったねえ、ベッドが壊れちゃったよ!」と笑ってました(で、そのあと、ベッドはどうしたのでしょう??)。
さて、軽食をすませて、午後からいよいよウォッチングツアーです。2隻のゴムボートに分乗して、クジラを探しに行きます。ボートからの目線が低く、遠くのブローは見つけにくいのですが、走り回って探します。水中観察が主目的なので、クジラを見つけても、寄ってこないようだとさっさと離れて別のクジラを探しに行きます。
とはいえ、アクティブなクジラがいれば、ウォッチもします。ゴムボートからは、クジラが大きく見えます。水深が浅いせいかあまりフルークを上げませんが、それでも、時にブリーチやペダンクルスラップをしていました。
この日は、ゆっくりしてる3頭のザトウを見つけたので、スタッフが海に入ってみましたが、水中では確認できなかったようで、他の人は入らずじまいでした。結局、数ポッドのザトウをウォッチして、船に戻りました。夕食をすませて、翌日以降に期待しつつ、休むことにしました。
翌日から4日間は、午前と午後、それぞれボートに乗り込んでのツアーでした。実は、私たちが行ったのはザトウシーズンの初めだったので、数はまだそれほど多くなかったようです。それでも、ほとんどの場合、クジラの姿を見ることはできました。ただ、必ず水中に入るチャンスがあるとは限りません。むしろ、入れる方が少なかったです。クジラの動きが速ければ無理ですし、また、ゴーサインで入っても、透明度が良くなくて何も見えないこともしばしばでした。
見えたとしても、おおむね、緑がかった海の中にザトウの姿がぼーっと見える感じでした。そのまま、クジラは前を横切っていきます。ゆっくりしてるようでもクジラの動きは速く、トップのガイドと私が見えても、あとから泳いできた人には見えないことも。こちらにちょっと興味を示した子クジラもいましたが、すぐにお母さんに連れられて行っちゃいました。
それでも、日を過ごし数を重ねるうちには、お母さんの背中に乗ってる可愛い子クジラの姿や、アダルト3頭が縦一列で水中をどうどうと行進していくさまなど見られました。もう1隻のボートでは、ソングが聞こえたり、ゆっくり停まってる親子を見られたりしていたそうです。
本船に戻ってから、食事をとりながら別のボートに乗った同士で互いの状況や感想を話し合うのも、楽しいひとときでした。今回のクルーズでご一緒だった外人さんのグループは、はるばるヨーロッパからいらした常連さんたちでした。クジラそのものに特別な思い入れがあるわけではなく、クジラのいる海でのヒーリングが目的のようでした。日ごとにウォッチングボートに乗る人の数が減っていき、船に残ってそれぞれ瞑想などされてたようです。
ボートに乗ってても、笛を吹いたり太鼓を叩いたり、いろいろなさってました。もちろん、クジラを嫌がらせさえしなければ、構わないでしょう。でも、じきに、「寒い、帰ろう」とか「お腹が空いた、もう戻ろう」とかあきらめが早く、クジラ目的のこちらとしては、え〜!?!? もっとクジラを見ようよ!!といいたいのだけど、引き留めるわけにもいかず、ちょっとストレスが溜まってしまいました・・・。
でも、実は海外でのウォッチングツアーではよくあることで、乗り合いである以上、仕方ないですね。どうも、日本人のほうがホエールウォッチとなると一心不乱にクジラを見たがる傾向があり、おおむね、外人さんはそこまでクジラにこだわらない方が多いです。
バンクでクジラを探して4日間を過ごした翌朝、船のアンカーを上げました。
幸い、帰りの海況は穏やかで、4時間半ほどで桟橋に戻りました。入管の手続きのあと、午後は街をぶらつきます。夜には、近くのレストランで打ち上げパーティ。そのあと船に戻って、もう一泊します。
翌日は、近くのオーシャンワールドという、アメリカのシーワールドのような施設で遊びます(入園料US$55のところ、割引料金で$15に。バイキングのランチ付き)。ここでは、飼育してるイルカの背ビレに掴まって水面を引っ張ってもらうアトラクションがありました(US$125)。アシカのショーも楽しかったです。ギフトショップは、前日行った街中のお店より安くてお洒落だけど、どのパンツも異様に足が長すぎました!そういえば、ここの住人は皆、とーっても足長です・・・。
午後、タクシーで空港へ。マイアミ乗り継ぎでロサンジェルスで一泊、その翌日の便で成田へ向かい、全11日間の旅行は終了しました。
率直に言って、今回のツアーでもっとも残念だったのは、クルーズのキャプテンやスタッフに信頼をおけなかったことです。ウォッチ中のゴムボートで客の前に立ちふさがって夢中になって写真を撮ってるのはキャプテンだし、客を後回しにしてまず自分がビデオ抱えてボートの一番良い席に乗り込むのもスタッフです。クジラの見つけ方、操船の仕方、ガイドの仕方、どれも気まぐれで行き当たりばったりとしか思えず、納得がいきませんでした。オーナーの目の行き届かないところでの雇われキャプテンとスタッフって、こんなものなのでしょうか。私たち自身のスタッフとしてのあり方に、いい反面教師であったと言えるでしょう。

シルバーバンクは、水深が浅くて穏やかなリーフの中で多くのザトウを見られる、しかも水中観察も可能な、貴重な海域です。国がかりでこの海を守ろうとしている姿勢にも、敬意を表します。
海もクジラも魅力的ですので、ぜひもう一度、今度は違うボートで訪れてみたいところです。