東オーストラリアのブリスベンの北にあるハービーベイでは、8月から10月にかけて、ザトウクジラをウォッチングできます。
南極で採餌しているザトウクジラは、繁殖のために暖かい北へ上がります。グレートバリアリーフで子供を産んだあと、南極へ帰る途中、ハービーベイで小休止するのだそうです。
ザトウクジラの尾や腹部の白黒の模様は個体によって異なりますが、南半球のザトウは北半球のザトウよりも白い部分が多く、西オーストラリアより東オーストラリアの方が多くなります。また、からだも北半球より大きいそうです。
そんな南半球の大きくお腹の白いザトウクジラに会いたくて、ハービーベイに行ってきました。

2003年10月25日〜28日

ハービーベイでは10隻以上のウォッチング船があり、ツアーの時間設定もいろいろのようですが、シーズン終盤だったせいか、私たちが行った時期は5隻ほどが半日ツアーを催行していました。3日半の滞在中、天候海況は良くなったり悪くなったりとめまぐるしく変わり、ツアーキャンセルとなることも多く、ほぼ50%のツアー催行率でした。
いつでもこうなのか、それともこのときに限って海況が悪かったのかは解りません。結局、3日半の滞在中に、半日ツアーを4回、それぞれ違う船に乗りました。
どの船も、ハービーベイの港から1時間半ほど走って、クジラを多く見られる海域を目指します。4時間くらいのツアーで、往復に3時間近くかかるわけですから、だいたいウォッチング時間は正味1時間から1時間半です。それでも、毎回クジラに会うことができました。
目的の白いお腹を見るためには、ブリーチなどのアクティブな行動で肝心のお腹を水面上に出してくれなくてはならないわけですから、そうそう簡単に見られはしないだろうと半ば覚悟していたのですが、なんと水面でブローするだけでも、横腹の白が見えます。あんなところまで白いのね、とつくづく感心しちゃいました。もちろん、潜る前に見せるフルークの裏側も、真っ白です。その白も、半端な色ではなく、白い絵の具をそのままべったり塗りつけたような、見事な白です。
そのうえ、彼らはけっこうアクティブでした。一番海況が悪くて親子1組しか見られなかったときでも、しばらくついていくうちに2頭が揃って連続ブリーチを始めて、近距離でのドアップブリーチを堪能しました。ブリーチすると、その背中の黒とお腹の白のコントラストがとても美しいです。とりわけ白い部分が、日差しを浴びて眩しく輝きます。
また、確かに、小笠原のザトウよりも大きく見えました。水面に現れる部分も広く太く見えますし、アダルトのブリーチでは、その大きさと重量感に改めて驚かされました。
どの船もクジラを追い回さないせいか、クジラたちものんびりしていて、あまり船の接近を気にしてないようでした。クジラに100m以上近付かないなどのルールはあるようですが、ときにクジラから船に近付いて来ちゃうこともありました。あるときは、親子が船に近付いてきたかと思うと真下をくぐっていって、舳先に抜けた子クジラがすぐ前でスパイホップ!船上の私たちに興味があるようで、こっちを見ている子クジラの眼がはっきり見えました。
メイティングらしき群にも遭いました。数頭の雄クジラに追われる母クジラがペックスラップ・テールスラップ・ブリーチと続けながらも、その合間に水面で横になったりひっくり返ったり。そのたびに見える白い大きなお腹がぷっくりしています。群全体が激しく動きながら、どんどん泳いでいきました。
かと思うと、授乳してると思われる親子の姿もありました。海の透明度は決して良くないのですが、クジラの体の白い部分は水面下でも良く見えます。このときも、母クジラの下半身のあたりに授乳中の子クジラらしき影があるのがわかりました。
また、ザトウクジラ以外にハンドウイルカを見ることもありました。小笠原でスイムの対象となってるミナミハンドウイルカではなく、もっと大きなハンドウイルカのほうです。それでも、さすがにザトウの横ではかなり小さく見えます。数頭のイルカたちがひとしきりクジラの回りで遊んでから、やがて離れていきました。
こうして、ツアーではたいていは複数の群をウォッチできました。船同士でクジラの情報を教え合ってるふうでもありましたが、クジラの数も多いので、ひとつの群に2隻以上が集まるのは少なかったです。
いくつかのツアーに乗ってみて、船の大小はありましたけど、だいたいの内容や乗り心地と満足度は似ていました。ただ、ランチ付きの船は失敗でした。たまたまでしょうが、ランチのタイミングが悪くて、食べてる間にクジラがアクティブになったのを見損ねてしまうし、お皿を置いてクジラを見ていると「食器を片付けたいから早く食事を済ませるように」とせかされちゃうし、ウォッチとランチのどちらもゆっくりできませんでした。
ランチのないツアーでも、アフタヌーンティは必ずついてました。コーヒーと共にクッキーを出してくれますが、これまたクジラに夢中でいただき損ねることもしばしば。ウォッチが終わってから帰りがけに出してくださる船だと、落ち着いていただけるので有り難かったなぁ。

いずれにせよ、半日ツアーでこれだけ中身が濃く、また当たりはずれが少ないのは、ウォッチャーとして嬉しいことです。南半球のお腹の白いザトウを満喫しましたが、ぜひもう一度訪ねたいところです。今度はもっとフィルムをたくさん用意しなくては!満足できるウォッチングポイントでした。