小笠原の水先案内人

vol.40 2015年10月24日配信

Contents ★後ろに注意!★
                ★音を聴く★
                ★ボニンブルー★
                ★初ザトウは誰が?!★
                ★Tomocolumn 32「また異種間の子育て?」★
                ★秋の寄港便★
                ★年末年始便★
                ★新しいおがさわら丸★
                ★東京愛らんどフォトコンテスト★
                ★配信停止のご連絡★

こんにちは、TOMOKOです。
今年は、夏から秋にかけて、いくつもの台風が小笠原に影響を及ぼしました。
例年にない進路で、おがさわら丸の運行スケジュールもずいぶん変わってしまいました。
中でも、シーズン最中の8月8日東京出港便欠航による影響は多大でした。次便が満員だったため空席待ちもできず、多くの観光客が来島をあきらめました。10年以上にわたって毎年いらしてるハードリピーターさんも例外ではありません。ワタシにとっては、いつもの顔ぶれが見られない盆踊りはサビシイものでした。
10月になってもまだ、台風の影響が続いてます。こんなに台風が続いたのは、Sea-Tac開業以来初めてです。
数年分の台風が来てしまったからには、来年は台風の影響ゼロになるといいですね。

★後ろに注意!★
この夏も、たくさんのイルカのウォッチやスイムを楽しみました。
とりわけ後半は、ミナミハンドウイルカの大きな群れが多かったように感じています。もちろん1頭だけとのスイムも楽しいですけど、大きな群れとのスイムではその多さと広がりに圧倒されてしまいます。海に入ると、次から次へとイルカたちがすぐ下や横を泳いでいくのです。視野が狭い水中マスクでも、これほどの数のイルカたちを見逃しようがありません。まだ潜ることが出来ないスノーケリング初心者のかたも、間近でイルカをご覧いただけます。
ひとつの群れには、好奇心の強いイルカや眼をつぶって寝ているイルカ、くわえているサカナを見せびらかしにくるイルカ、母イルカの陰から覗いている子イルカ、数頭で遊んでいるイルカなどがいます。いちどきにいろいろな行動を見られるのも嬉しいです。
次から次へと現れるイルカたちと泳ぎつづけて、ヘトヘトになってしまうこともあります。でも、なんて幸せな疲労感でしょう。
こんな群れとスイムされるときは、見ていたイルカが泳ぎ去っても、油断せず、どうぞ後ろを振り返ってください。もしかしたら、あとに続くイルカがすぐ後ろにいるかもしれません。
離れていく前方のイルカに夢中で、後方で遊びたがっているイルカに気付かない、なんてことがよくあります。はたで見ていて、「うしろ、うしろ!」と叫びたくなります(水中なので、叫んでも聞こえないのですが)。
大きな群れとのスイムチャンスが訪れたならば、皆さま、くれぐれも「後ろに注意!」なさってください。イルカはいつどこであなたを見ているかもしれませんから。(NAOMI)

★音を聴く★
夏から秋は、マッコウクジラのウォッチシーズンでもあります。
マッコウクジラは水深1000m以深の外洋域を、餌を追って回遊しています。ザトウクジラのように岸に沿って走れば見つけやすい、というわけではありません。広い海のどこにいるかわからず、闇雲に捜して見つけるのは難しいです。そこで、大きな手がかりとなるのが、マッコウが出す音です。
マッコウが目指す深海には光が届きませんから、彼らは眼ではなく、音を発してその跳ね返りで餌を捜します。クリック音と言われるその音の反響で、狙う獲物の大きさや距離もわかります。私たちは、船上からその音を頼りにしてマッコウの位置を探ります。
水深1000mの海域へ行くと、まずは水中マイクを入れて、マッコウが出すクリック音が聞こえるかどうかを確かめます。
最初の投下からクリック音が聞こえたときは、ほっとします。でも、数マイル走るごとにマイクを入れ続けてもなかなか音が聞こえないときは、耳がおかしくなったかしら、水中マイクが壊れたかしらと不安になります。期待してじっと見守ってる皆さまに「何も聞こえませんでした」とお答えしにくいです。そう聞いてガッカリされた顔に、胃が痛くなる思いがします。
それでも、たいていは、やがてクリック音が聞こえてきます。音の方向を見定めて、そちらへ向かいます。
次第に大きくなる音を頼りに近付いて、全周から聞こえるようになったら、いよいよマッコウは間近です。この頃になると、はっきり聞こえる音が初めての方でもわかりやすくなりますので、皆さまにも聞いていただきます。交代にヘッドフォンを着けるのですが、「何も聞こえない」と仰るかたもいらっしゃいます。どうやら、クジラが出すからと鳴き声や歌声のような音をイメージされてるようです。マッコウのクリック音は、「カチッ」「カツカツ」「パチン」という機械的な音です。こんな音を生きものが出すなんて、不思議ですよね。
さぁ、ここからあとは、眼で浮上した姿を探します。斜めに上がるブロー、黒く輝く胴体、きらめく水しぶきなどなどを手がかりに見つけましょう。
30分から1時間も潜っていられるマッコウクジラなので、タイミングが悪いと待ち時間も長くなります。でも、1頭を見つけられれば、繁殖集団であるマッコウたちは回りにも同じ群れのブローがあるでしょう。群れがまとまっていると、クリック音もひときわ賑やかです。
マッコウのいる外洋域では、マダライルカやハンドウイルカ、アカボウクジラなど珍しいクジライルカに会えるチャンスもあります。実は、イルカはまた、マッコウとは異なる音を出しています。
皆さまも、外洋域で彼らが発する珍しい音を聴いてみませんか。(TOMOKO)

★ボニンブルー★
小笠原に台風が近付くと、海が荒れ、ツアーを催行できない日もありました。でも、台風が過ぎれば、「ボニンブルー」の海が皆さまを出迎えてくれます。
日射しの中で海に滑りこむと、一面の青が私たちを包んでくれます。キラキラと光が反射する世界では、サカナやウミガメ、イルカたちが優雅に泳いでいます。1分1秒でも長くこの世界に浸っていたいと思わされます。
水中に入らなくても、船上からでも、「ボニンブルー」は私たちを魅了します。走る船から覗きこめば、透き通る青の中に海底のサンゴやサカナが見えることもあります。海域公園などで船を停めたときは、なおさらよく見えます。青を背景にしたカラフルなサカナたちは、いちだんと鮮やかです。
また、ツアーで上陸する南島からの景色も、格別です。東尾根に登ると、右も左も、青の濃淡のグラデーションが広がっています。お客さまからも感嘆の声が上がり、何度も見ている私自身も毎回感動してしまうポイントです。
11月も間近ですが、それでも、好天の日には、誰しもが虜になってしまうあの青の世界が私たちを待っているはずです。あなたも「ボニンブルー」にぜひ染まってください。(NAOMI)

★初ザトウは誰が?!★
秋に鳴くオガサワラゼミの声が賑やかなこのごろ、めっきり涼しくなりました。冬の訪れもそう遠くはないかもしれません。
冬が来れば、海の生きものによる熱いバトルシーズンが開幕します。そうです、ザトウクジラの恋の季節がやってくるのです。冬から春にかけて、小笠原の海では、繁殖のために帰ってきたザトウクジラたちから目が離せません。きっとまた、メスをめぐって何頭ものオスたちが大きなしぶきを上げて派手に争うことでしょう。
いえ、その前に、すでにもう、陸の生きものによるバトルが始まろうとしているのです。ツアーガイドたちによる、「誰が、最初にザトウクジラを見つけるか」というバトルです。ガイドは皆、「(誰よりも眼が鋭い)我こそは!」と思ってるでしょう。まるで、最初に見つけることがもっともザトウを愛している証であるかのように。もちろん私自身も、初ザトウを見つけられたらと、海に出るたびにブローを捜しています。
昨シーズンのザトウクジラ初確認は、11月13日でした。今シーズンも、通過地点の御蔵島や八丈島で、すでにザトウクジラが見られています。ということは、実はもう、小笠原のすぐ近くまで帰ってきているのかもしれません。
冬を熱く熱く楽しませてくれるザトウクジラたち、そんな彼らに、まっさきに「お帰りなさい」を言うのは誰かしら?(NAOMI)

★Tomocolumn 32「また異種間の子育て?」★
以前、#29「異種間の子育て?」というタイトルで、ミナミハンドウイルカがハシナガイルカの赤ちゃんを連れていたお話をしました。たぶん授乳もできずに死んでしまったであろう赤ちゃんに、「今後は、あまり起きて欲しくない出来事です。」と締めくくったのに、今年もまた起きてしまいました。
8月7日、ミナミハンドウイルカの群れの1頭(仮にAとします)がハシナガイルカのベビーを連れていました。
このときのAは、ベビーを自分の頭で持ち上げて空中に放り出すという、乱暴な仕草を2回見せました。ベビーをオモチャにして弄んでるように見えました。
8月14日には、別のミナミハンドウイルカ(仮にBとします)がベビーを連れていました。ベビーはまるで母親に対するようにぴったり付いて泳いでいます。しきりにおっぱいをせがむそぶりもします。Bもベビーをかばうように泳いでいます。一見、実の親子のようです。この2頭に近付こうとするたびに、他のイルカが間に入ってこちらを妨害しました。果たしてBが授乳してるかどうかはわからなかったのですが、その後、数日おきに2頭揃って目撃されました。ベビーは痩せもせず、元気に泳いでいます。ハシナガらしいきりもみジャンプを見せることもありました。全く弱ってるふうではないので、きっと授乳できていたのでしょう。Bとベビーは、3度の台風来襲にもかかわらず、9月22日まで父島列島沿岸で見られていました。
もしかしたらこのままBがベビーを育て上げるのかしらと期待し始めた9月29日、ベビーを連れていたのは、また別のイルカ(仮にCとします)でした。このときのベビーは痩せて、泳ぎはおぼつかなく、潜ることもできません。Cはベビーのすぐ横を泳いでいます。ベビーに近付いて背中に乗せるさまは、弱ったベビーの泳ぎを助けているようにも見えますが、それにしては当たりがきつく、私はやはりオモチャにしてるように感じました。
この日を最後に、ベビーは見られていません。たぶん、あのあとまもなく命を閉じたと思われます。
そもそも、なぜミナミハンドウイルカがハシナガイルカのベビーを連れていたのかは、わかりません。わが子を亡くしたミナミハンドウが、代わりにハシナガのベビーを連れ出したのか。それとも、はじめから遊びのつもりでミナミハンドウが攫ったのか。または、たまたま迷子になったベビーを保護したのか。
私の印象では、Bはベビーを保護するように接していましたが、AとCは乱暴でした。BからどうしてCに渡ったのかもわかりません。Cが奪ったのかもしれないし、Bが子育てごっこに飽きたのかもしれません。
ミナミハンドウがサカナを苛めるさまはよく見られます。弱肉強食の自然界では、小さなハシナガのベビーも、彼らにとって格好の遊び道具だった可能性もあります。
鯨類による異種間の子育ては珍しく、52日間にわたって観察され続けたのは、世界的に見てもまれな事例だそうです。
ミナミハンドウの流行にならないよう、これが最後になるように願っています。(TOMOKO)

★秋の寄港便★
おがさわら丸の寄港便も増えています。
いつもと違う航路や景色も珍しいですし、東京以外にお住まいでより便利になるかたもいらっしゃるでしょう。
来島を計画されるときには、こちらもチェックなさって下さい。
(なお、寄港便は、それぞれ到着が30分遅れとなります)

 館山寄港便  10月25日(日)~30日(金)
 久里浜寄港便 11月12日(木)~17日(火)
 久里浜寄港便 11月18日(水)~23日(月)

 小笠原海運HP
 http://www.ogasawarakaiun.co.jp/service/

★年末年始便★
おがさわら丸12月26日東京発便から1月10日父島発便までの乗船券は、11月9日(月)の朝9時からです。年間でもっとも混む年末年始便ですので、来島を予定されてる方は、どうぞお早めに手配なさってください。
Sea-Tacでは、その時期はホエールウォッチ(ザトウ)&ドルフィンツアーを催行します。ザトウシーズンのはしりではありますが、近年は順調にクジラを見られています。
いっぽう、イルカは一年中父島列島周りに生息していますけど、冬の海は荒れやすく、泳いだ後はかなり冷え込みます。ドルフィンスイムご希望の方は、それなりのご準備をお願いします。
おがさわら丸と宿のご予約が済んだら、ツアーのご予約をお待ちしてます!

★新しいおがさわら丸★
来年就航予定のおがさわら丸新船の建造が進んでいます。
大型化・高速化・快適性の向上・バリアフリーの充実をコンセプトにしているとのことで、今のおがさわら丸より階層が増えて、長さは150mにもなります。旅客定員は892名、航海時間も短くなって24時間の予定です。
その進捗状況は、以下のブログにアップされています。

 http://blog.livedoor.jp/ogasawarakaiun-shinsen/

また、旅行代理店のナショナルランドが、おがさわら丸の進水式に合わせて羽田発の見学ツアーを催行予定です。
2016年1月26日~27日の日程で、下関にある造船所へ向かいます。
たぶん、陸に上がったおがさわら丸の全体を見られる機会はこれきりでしょう。
初めて海に浮かぶさまに興味のあるかたは、以下へどうぞ。

 http://www.04998.net/小笠原内地ツアー/新おがさわら丸進水式/

★東京愛らんどフォトコンテスト★
伊豆諸島・小笠原諸島の写真を対象としたフォトコンテストへ応募なさいませんか。
島ごとに観光客部門と島内在住者部門を分けて、受付中です。
〆切が2016年9月30日とまだだいぶありますので、今からの撮影でも充分間に合いますね。
詳しくは、以下のアドレスへ。

 http://k.d.mail-magazine.co.jp/t/e4rh/e0aunzu0yoj8v1k912Yjs

PAGETOP
Copyright © Sea-Tac All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.