Contents ★子イルカ・その1★
★子イルカ・その2★
★子イルカ・その3★
★にごにごスイム★
★ロウニンアジとの争い★
★南島の変貌★
★Tomocolumn 34「イルカたち」★
★年末年始のツアー★
こんにちは、TOMOKOです。
小笠原も、空気が涼しくなりました。
でも水温は27℃という、夏を思わせる高さで、気持ち良くスイムを楽しめています。
今シーズンに会った印象に残るミナミハンドウイルカをご紹介しましょう。
★子イルカ・その1★
8月17日、南島沖で見つけたミナミハンドウイルカ15頭の中に2組の親子がいました。群れは親子を囲むように泳ぎ、ヒトには興味がないようです。親子を撮ろうと近付いて、ビックリしました。子イルカは、背中に大きな怪我を負っていました。ざっくり大きくえぐられて、白とピンクの肉が見えてます。背ビレも背中も傷だらけです。
こんな大きな怪我をして、この子は果たして生き延びられるのでしょうか。これまでに怪我から生還したイルカを何頭も見ていますけど、この子はまだほんの赤ちゃんです。オトナのような体力はないでしょう。感染症も心配です。
25日に、またこの子イルカに会いました。改めて観察すると、腹部にも大きな歯形がついていました。このたくさんの傷は、たぶんサメに襲われたのでしょう。何度も何度も噛まれながら、必死で逃げたと思われます。でも、まだ生々しいさまにもかかわらず、このときの子イルカは元気に泳いでいて、母イルカのおっぱいを飲んでいました。なんとか生き延びられるかしら。
そんなバイト(と呼んでいます。シャークバイトの略です)に次に会ったのは、9月29日でした。一ヶ月ぶりの元気な姿に、生きてたのねと、リピーターさんと海上で顔を見合わせて大喜びしました。あれだけひどかった傷もずいぶん快くなってるようです。もう大丈夫でしょう。
背のうしろに残る切れ込みは、懐かしいノッチを思い出させます。きっとバイトも、ノッチのように好奇心旺盛で、逞しいイルカなのでしょう。大きくなったら、私たちと遊んでくれるはず。
その日を待ってるよ。早く全快してね。(TOMOKO)
★子イルカ・その2★
ぐずりがちな空模様の8月19日、小港沖でイルカに遭いました。海に入ると、5頭がすーっと通り過ぎていきます。
見ると、ライティ(と呼んでいるメス)が、ベビーを連れていました。あら? ライティ、いつのまに子どもを産んだの? お腹が大きかったっけ?
それまでは、妊娠してるとは気付いていませんでした。ベビーを産んだのなら、おめでとうと言いたいところですが、ベビーの体色がずいぶん白いです。頭のあたりは、まるで海藻が付いているように黒くなっています。不思議な色合いが気になりました。
たまたま色白の子なのかしらと思っていましたが、4日後に、哀しい姿を見ることになってしまいました。
ライティが、死んだ子イルカの胸ビレをくわえたまま、泳いでいたのでした。やはりあの妙な体色は不健康の証だったのでしょうか。
子の死因はわかりません。初めから体力がなかったのかもしれませんし、外見からはわからない怪我を負っていたのかもしれません。
それにしても気になるのは、本当にライティの子だったのかということです。その前のライティのお腹が、はっきりわかるほどに大きくはなかったものですから。
ライティが死体をくわえていたのも、自身の子の死を悼んでいつまでも離せずにいたのかもしれませんけど、もしかしたら、別のミナミハンドウの子をオモチャにしていただけかもしれません。授乳ができなくて死なせてしまった可能性もあります。なにしろ、ライティには、明らかに自分の子ではない、ハシナガの子を連れていた前例があります。
疑問ばかりですけど、いずれにしても、子イルカの命が尽きてしまったのは残念でした。(TOMOKO)
★子イルカ・その3★
Column#29と#32で触れた事例に続けて、また起きてしまいました。
7月11日に会ったのは、100頭のハシナガイルカと40頭のミナミハンドウイルカの混群でした。
ミナミハンドウを目指してスイムしていたら、あ、またいました、ハシナガイルカのベビーを連れているミナミハンドウが!
また誘拐しちゃったの!?
大きなミナミハンドウについていこうと懸命に泳ぐハシナガベビーは、より小さく見えるだけに痛々しいです。いつものように、この2頭に近付こうとすると別のミナミハンドウが邪魔しに来ます。ミナミハンドウの群全体の雰囲気も騒々しく、誘拐遊びに興奮しているようです。
これまで、目撃されては生き延びられずにいるハシナガベビーですから、この子も楽観できないでしょう。結局、その後の姿は確認できていません。
たぶん、ミナミハンドウにとってはハシナガベビーを連れ回すのも単なる遊びなのでしょう。ハシナガイルカたちにはそれを防ぐ手立てはないのでしょうか。
自然界では、弱者は強者の前ではどうにも無力のようです。(TOMOKO)
★にごにごスイム★
台風が発生すると、うねりの影響で海が濁ってしまうことがままあります。そんな濁りの中を泳ぐイルカには、もっと透明度の良いところに移動してほしい、と願ってしまいます。でも、にごにごの海ならではの、楽しめるイルカスイムもあります。
濁りで色が変わっている海域で、ミナミハンドウイルカの背ビレを見つけました。あぁ、ここか・・・と思いながらエントリーすると、案の定、透明度は2~3メートルでしょうか。隣を泳ぐかたもよく見えないほどです。
でも、イルカはとてもフレンドリーでした。濁りの中から突然間近にイルカが現れると、勢いよく、くるくる回ります。いったん去って見えなくなっても、また、いきなり目の前にイルカの顔です。透明度は悪いからこそ、心の準備をする余裕もなく唐突にドアップで迫るイルカにはドキッとさせられます。
イルカが去っても、ぼんやり見えるヒトの姿を目指して行くと、そこにイルカもいたりして、ドラマチックなのでした。
どこからイルカが来るかわからなくて、海に入るたびにドキドキします。でも、私たちがイルカを捜して寄っていくのではなく、海中に停まっている私たちを目指してイルカのほうから近付いて遊んでくれるのって、なんて楽しいことでしょう。
そんな喜びをたっぷり味わわせてくれるにごにごスイムも、捨てたものではありません。(NAOMI)
★ロウニンアジとの争い★
儀兵岩で、イルカの背ビレを見つけました。
水中に入ると、数頭のミナミハンドウイルカが海底に集まっています。その傍には、かたちが違うやや小さめの姿がありました。あれは、何かしら? 子イルカ? よーく目を凝らしてみると、なんとロウニンアジです! ロウニンアジが、イルカと、サカナの奪い合いをしていたのでした。
ロウニンアジは、イルカの半分以上の大きさでした。体高はロウニンアジの方があるかもしれません。そんな大型魚と肉食哺乳類の獲物の捕り合いはなかなかの迫力でした。イルカがくわえたかと思うと、すぐさまロウニンアジが横からアタックします。イルカはさっと身を翻します。ロウニンアジは、なお果敢に向かっていきます。奪っては奪われ、激しい攻防戦でした。
ずっと見続けていたかったのですけど、追いかけあいながらの集団の移動は速く、振り切られてしまいました。私たちはいったんエキジットし、船で追いかけて、再度エントリーしました。すると、イルカがまとまって泳いできました。すでにさきほどの殺気だった雰囲気はなく、潜ってみるとイルカは絡んでくれました。ロウニンアジが遅れて泳いできましたが、イルカへ攻撃するようすはありません。
どうやら、すでに決着はついていたようです。この様子では、勝者はイルカだったのでしょうか。もうサカナを食べてしまったのかしら。
いつのまにかロウニンアジもいなくなり、その後は、お腹がくちて満足したのであろうイルカがたっぷり遊んでくれました。
私にとってはロウニンアジとの初めての出会いで、しかもイルカとの餌取り合戦を見るなんて、思い出すとあの時の興奮が蘇ってくるようです。(NAOMI)
★南島の変貌★
8月後半に発生した台風10号を覚えていらっしゃるでしょうか。不規則な進路をとり、強い勢力で日本各地に大きな被害をもたらしました。小笠原でも大時化となり、おがさわら丸も欠航となりました。
台風が去ってようやく穏やかになった海で、南島へ泳いで上陸しました。泳ぎながら、扇池の底がいつもより浅くなってるように感じました。さらに、ビーチロックの下にあった空洞がなくなっていたのです。不思議に思いつつ砂浜に上がると、サメ池への方向に大きな砂の壁が立ちはだかっていました。2~3メートルにもなる高さです。
これには驚きました。以前はなだらかな斜面だったのに、おそらく台風による大きな波が何度も襲い、大量の砂を海に流したのでしょう。その砂が扇池内に堆積したのなら、浅くなったのも道理です。サメ池への自然観察路へ向かうには、高い砂壁を大きく回り込むしかありません。
また、ヒロベソカタマイマイの半化石が広がっていたところも様相が変わってしまいました。貝殻が砂に埋まってしまい、あれほど多かった殻が激減しました。
自然の影響を受けやすい南島では今までも変化を感じることはありましたが、短期間でこれほど大きく変貌するとは思いもよりませんでした。あの砂の壁やカタマイマイの殻は、どれだけの月日をかけて元に戻るのでしょうか。もしくは、戻らないままで、また違った景色に変わるのでしょうか。
どのような姿になっても、南島は多くの人々を魅せ続けると思いたいところですけど。(NAOMI)
★Tomocolumn 34「イルカたち」★
図らずも、今号はイルカの話題ばかりになってしまいました。
私自身が小笠原で初めてミナミハンドウイルカを水中で見たのは、もう30年近く前のことです。当時は、イルカ目的のツアーなどなく、ダイビングの行き帰りにたまたま出会うことがあれば、先着順で海に飛びこんだものです。驚いて泳ぎ去るイルカを一目でも見られたら、皆の羨望の的でした。
Sea-Tacでイルカツアーを始めてからでも23年が過ぎ、野生のイルカを見た回数だけで言えば人後に落ちないでしょう。
とはいえ、未だに、「こんなイルカの行動は初めて見た!」「なぜイルカはこんな行動をするの?」と驚かされることばかりです。ミナミハンドウイルカが何を食べているのか、どこに住んでいるのか、何頭いるのか、今でもわからないことだらけです。
所詮、陸の生きものである私たちが海の生きものであるイルカをわかろうとするのは不可能でしょう。振り返って考えれば、いちばん親しいはずの家族だって知らないことやわからないことが多いはず。まして、種の異なる生きものをわかろうなんて、僭越かもしれません。
でも、わからなくても好きでいることはできます。きっとこれからも、イルカたちは、私を不思議な驚きと愛しい思いとで満たしてくれるでしょう。(TOMOKO)
★年末年始のツアー★
Sea-Tacでは、12月23日便からザトウクジラウオッチ&ドルフィンツアーを催行します。
以前は1月までは少なかったザトウクジラですが、近年は12月後半からほぼ確実にツアーで見られています。ツアーご予約は、おがさわら丸乗船券と宿の手配後にお受けします。
年間でもっとも混む時期ですので、どうぞご予約はお早めに!
★お知らせについて★
ニューズレターをサイトにアップしたとき、希望されたかたにメールでお知らせしています。
新たにお知らせを希望されるかた、お知らせを停止されたいかたは、下記まで、お名前・アドレスと共にご連絡ください。
宜しくお願いします。
info@sea-tac.jp