アラスカの州都ジュノーへは、シアトルかアンカレッジから行きます。夏のシーズン中は、大きな観光船が毎日何隻もやってきて、大勢の観光客で賑わいます。
93年にジュノーに行ったときは日帰りのホエールウォッチングツアーはありませんでしたが、99年には半日ツアーをやってました。このツアーでは、ザトウクジラのほか、シーズン中に何回かはシャチを見ることもあるそうです。
限られた時間の中でクジラを見てトドを見て氷河を見て、という観光ツアーですので、クジラだけが目的だとちょっと物足りないかもしれません。
その他に、ジュノーからケチカンまで3泊4日の大型船のクルーズでも、途中でクジラやイルカを見ることができるはずです。ただ、なにぶんにも大きい船ですので、クジラとの距離も若干遠くなってしまうでしょう。
アラスカは、さまざまないきものが生息している自然が実に素晴らしく、個人的には一番好きなところです。

1999年6月21日

8時半、港のそばのDolphin Whale Watch Toursのオフィスに行く。毎日4回のウォッチングツアーがあり、ちょうど9時からのツアーが空いているという。料金を聞くと、$97+TAXだけどあなたたち4人なら$87+TAXにするわとのこと。実を言うと、ツアーはやめてのんびり買い物しようかと半分は迷っていたのだけど、そういわれて自分ひとりだけがやめられなくなってしまう。
支払いを済ませて、バスに乗る。バスは北へ向かう。途中で、メンデンホール氷河が見える広場で一旦停止。残念ながら、ガスが出ていて氷河はよく見えない。そのまま20分くらい走って、オーク湾に着く。ここで赤いジェットボートに乗船。頬髭を生やした大柄の船長とハイスクールを出たばかりのガイドの女の子が乗客を迎える。20人乗りのボートで、キャビンに座席が並んでいる。2人に1つづつ双眼鏡が置いてあり、自由に使える。赤い防寒ジャケットも無料で貸してくれる。舳先と後部には、それぞれ数人づつ出られるオープンデッキがある。
桟橋から離れると、ボートは33ノットの速さで北上する。数頭のトドが、走るボートの直前で泡を食って逃げ出す。岩礁にはハクトウワシがいる。
女の子のガイドを聞きながらしばらく走ると、ザトウのブローを発見。前のデッキを素早いおばさんたちに占有されたので、私たちは後ろのデッキに出る。クジラは前方にいて、後ろからはキャビンの屋根が邪魔でちょっと見にくい。背の高い西洋人なら平気かもしれないが、私たち日本人は背伸びしてやっと見える。借りたジャケットのおかげで、外でも寒さは全く感じない。
クジラから100〜200mで船を停め、フルークアップまで見る。そのあと次の浮上まで待つことはせず、また走り出す。ボートが走るときは、キャビンに入るようにいわれる。遠くのブリーチを見つけて向かうが、近付く頃には跳ばなくなってしまう。潮波もあるので、そこはあきらめてまた別のクジラへ。
それほど探し回らなくても、次々に数頭のクジラを見ることができる。
走行中は、キャビン内で女の子がクジラについて説明してくれるが、途中で何回も彼女の携帯電話が鳴る。その度に、失礼、と片隅に行って話している。戻ってきて続きを始めると、またすぐに呼び出し音が鳴る。さすがに何度も呼び出しが続くと、ちょっと困ったような顔をする。でもやっぱり、失礼、と言って電話にでる。どうやら、お父さんとお昼ご飯の相談をしているらしい。
4〜5頭のザトウのフルークアップを見たあとは、トドを見に行く。標識ブイの上で数頭のトドが重なるようにして寝ている。海面にいるトドがブイに乗ろうとしているが、なかなか入り込む隙間を見つけられないでいる。首を伸ばしては沈み、伸ばしては沈みしているうちに、その動きで波が起きてブイが揺れ、反動を利用してブイにとび乗る。うまい。その反対側では、乗るのに失敗して転げ落ちるトドもいる。
次は、岸に近付いて樹上のハクトウワシを見る。巣もあるはずだというが、見つけられない。針葉樹林の向こうの白い氷河が美しい。
11時半に桟橋に戻り、停泊してる船の間を通ってそろそろ着岸というとき、突然目の前に黒いものがでてきて、ブロー!ヒゲの船長がびっくりして大声を上げる。慌ててデッキに出ると、桟橋にいる人たちも指さして騒いでいる。次はどこに出るかと見回すが、なかなか出てこない。下船してからなおも見ていると、だいぶ離れたヨットの横でブローが出る。沖に向かっているらしい。どうしてこんなに浅いところにまで入り込んでしまったのか。めったにないことらしく、船長がいつまでも興奮していた。

来たときと同じバスに乗る。途中、広場に停まって遠くからメンデンホール氷河を見物。すでにガスは晴れていて、よく見える。それぞれが氷河をバックに記念写真を撮ってから、またバスに乗り込む。行きと違ってバスは町中を通り、あちこちガイドしながら12時に港へ戻った。3時間のツアーだが、ボートに乗っているのは正味2時間ほどになる。
なお、このツアーではザトウウォッチは「保証付き」で、もし見られなかったらTシャツを貰えることになっている。