アメリカ西海岸とカナダとの境にあるピュージェット湾には、80頭ほどのシャチが定住しているそうです。中でも、サンファンアイランドの西側はシャチ街道として知られてます。
夏のあいだ、アメリカのシアトルからシャチウォッチングのツアーが出ています。
私たちにとって3度目のシアトル訪問となる2001年、MOSQUIT FLEETというボートツアーに参加してみました。

2001年6月9日

朝7時30分、ダウンタウンのホテルへ車が迎えに来てくれます。30分ほどで、シアトルの北にあるエベレットという港に着きました。すでに、桟橋には数十人が並んで待っていました。ここのオフィスで予約しておいたチケット(ひとりUS$90)を受け取り、乗船します。船は予想以上に大きく、100〜150人は乗れるでしょう。船内はほぼ満員でした。キャビンの長椅子に座りますが、たまたま私の列は幅の広い人ばかりでちょっと窮屈でした・・・。
8時30分出港。あちこちでハクトウワシを見ながら船は北上し、サンファンアイランドを目指します。キャビンでは、ガイドがシャチについての解説をしています。船内のショップでは、コーヒー・クラムチャウダー・ホットドッグ・マフィン・クッキー・ポップコーンなど売ってます。好みのものを買って、さあ食べようとデッキに出ると、強い風でペーパー皿が飛びそうです。お皿とカップとを押さえながらの食事となり、使い捨てカイロと厚手の手袋を忘れてきたことを後悔しました。
さて、船はサンファンアイランドのフライデーハーバーに寄ってから、いよいよ本格的にシャチを探しにかかります。どうやら、どこかと無線でやりとりしてるよう。島の西側にシャチがいるとの情報を得てそちらへ走り出すと、あちこちからウォッチング船とおぼしき小さなボートが現れて、あとを追ってきます。たぶん、この船に付いていったらシャチに会えるとわかってるのではないでしょうか。
やがて、シャチの群れを発見とのアナウンスが。皆、キャビンから外へ出ます。アッパーデッキは風が強くて、寒いこと寒いこと!それでも、シャチ見たさに、風に飛ばされないよう手すりにしがみつきます(金属の手すりが、また冷たい!)。
見ると、シャチの背ビレが海面上のそこここにあります。餌を追ってるのでしょうか、数頭づつの群れが広がっています。小さいボートも10隻くらい集まっています。私たちの乗った船はエンジンを停めて、近付いてくるシャチをウォッチングします。
もっとも近い2〜3頭は雌の群れなのか、高い背ビレは見えず、静かにブローを繰り返しています。そこへ、別の4〜5頭の群が、波を蹴立てて猛スピードで近付いてきます。思いのほか早く、それだけでも迫力があります。高い背ビレを持つ成熟雄も混じっていて、群れの動きが活発です。と、テールスラップを始めるシャチに、仰向けになってペックスラップするシャチも。見慣れたザトウの細長い胸ビレと違って、丸い団扇のようなシャチの胸ビレは、激しく水面を叩いてもなんとなくユーモラスです。上半身を伸び上がるようにしてブリーチするシャチもいます。
成熟雄が、高くそびえる背ビレで海を切り裂くように素早く泳ぐさまは、カッコイイです。浮上のときは、まず背ビレからすーっと上がってきて、しばらくしてからようやく黒い背中が見えてきます。潜っていくときは、胴体を沈ませながら、徐々に背ビレも没していき、そして最後に、残っていた背ビレが横にぱたんと倒れるように海に消えていきました。余韻の残る沈み方でした。また別の群は、1頭の雌を雄たちが追っていて、交尾集団らしい動きをしていました。
こうして、船は停まったままで、代わる代わる近くのシャチの群をウォッチングしていましたが、やがてゆっくり動き出すと、今度はイシイルカの群が近付いてきて船首波に乗ります。シャチと同じ白黒の模様だけど、一回りも二回りも小さくて、その動きにシャチのような凄みはなく、軽やかです。数頭で楽しそうに波に乗っていて、乗客からも歓声が上がります。
そんなイルカたちを後に、船は少しづつ速度を速め、復路に向かいます。私たちもキャビンに入り、すっかり冷え切ったからだをホットドリンクで暖めたり、売ってるお土産をチェックしたり。キャビンでは、ガイドがシャチについての簡単な質問を乗客にして、正解を出した人にキャンディを投げています。また、棚の上のクジライルカ類の図鑑やアルバムを見ている人もいました。
ツアーの最後は、沿岸のイカダの上に寝ているアザラシウォッチです。そばに浮いてるケージにはアシカたちがいて、こちらも近くでゆっくり見られます。このケージは入り口が開いていてアシカが自由に出入りしてましたが、定期的に閉めて、捕らえたアシカに個体識別のマーキングをするとのことです。
16時30分、船はエベレットに帰港。また車でシアトルのホテルまで送ってくれます。途中で渋滞に引っかかりましたが、それでも17時30分には戻りました。

このツアーではシャチの遭遇率も高いようですし、シアトルという大きな街から簡単にウォッチングに行けるのはいいですね。ピュージェット湾には、シアトルからのほかにも、サンファンアイランドのフライデーハーバーやカナダのヴィクトリアからもウォッチングツアーが出ていて、往復にかかる時間もより短く、定員の少ない小さいボートもあるようです。