少し風が吹いています。
まずは外洋域へ船を走らせましょう。
先便ではマッコウクジラはお留守だったので、今日こそ出会いたいものです。
島を離れるにつれて、海の青さが増します。
水深1000mラインを越えたあたりで、クジラの出す音が聞こえるかどうか、水中マイクを入れてみました。
すると、いきなり、獲物を探すときに使うクリック音が全方向から聞こえてきました。
どうやら、船は、早くも彼らに取り囲まれているようです。
周囲を探して、ほどなく波間にブローを見つけました。
マッコウクジラは前頭部の左寄りに噴気孔があるので、斜めに上がるブローが特徴です。
マッコウは、ブローを繰り返し、尾を上げて潜っていきました。
1頭が潜ってしまっても、じきに、近くで別のクジラを見つけることができます。
今日は、クジラ間の距離が比較的近いようです。
次々現れるクジラたちを、順にウォッチしていきましょう。
小さなコドモを連れた母クジラもいました。
コドモの姿が時折見えなくなるのは、お母さんのお腹の下でおっぱいを飲んでいるのでしょう。
まだ背ビレもぺたんと寝たままの、愛らしい姿です。
クジラたちは、海面で何度も呼吸を繰り返します。
やがて背中をぐっと盛り上げてから、大きな尾を高くかかげ、深海へと潜ります。
そうして潜ったと思った次の瞬間、前方で大きな水飛沫が上がりました。
珍しいマッコウクジラのジャンプに、一同、大興奮です。
実は、船の後方遥か遠くでも、数秒前にジャンプらしき水飛沫が見えていました。
もしかするとクジラ同士のコミュニケーションだったのかしら、と想像してしまいます。
しばらくすると、さっきまで次から次へと見られていたブローが、ぷっつり途切れました。
マッコウは群れで暮らしているので、きっと皆でタイミングを合わせて海底へ向かったのでしょう。
次の浮上まで一時間ほどかかるかもしれませんから、私たちも父島列島沿岸域へ戻ることにしましょう。
兄島海域公園のキャベツビーチで、ランチとスノーケリング休憩です。
透明度がよく、海中のサカナやサンゴが透けて見えます。
水温も高くなり、水着だけでも寒くありません。
午後はイルカを探して、父島東岸を南下します。
ボックス沖で、大きな波が来たと思ったら、なんとその中にイルカがいるではありませんか!
1頭の若いミナミハンドウイルカが、楽しげに波乗りをしています。
一緒に泳いでくれないかと準備をしましたが、動きが速く、結局、見失ってしまいました。
このイルカは、ひとり気ままに遊びたい気分だったのでしょう。
巽湾で、またイルカです。
今度こそ、とエントリーしてみたものの、すぐに方向を変えてしまいます。
3頭のうち1頭が小さいコドモだったらしく、神経質になっていたのかもしれません。
今日のイルカは気難しいなあ、なんて思っていたら、他船がイルカ情報をくれました。
南島周りに大きな群れがいるとのことなので、急いで向かいましょう。
巽崎やハートロックを横目に、船は波飛沫を蹴立てて走ります。
多少波がありますが、改めての水中アプローチです。
親子が多い群れで、コドモはお母さんに寄り添って泳ぎながら、ヒトをちらちら見ています。
海底が真っ白のサンゴダストなので、イルカの姿がよく映えます。
頭数が多く、前方集団を見送ってもまた後ろから別のイルカがやってきます。
17頭まではカウントできましたが、もっといたかもしれません。
群れの中には、私たちがマダムと呼んでいるお馴染みのイルカもいました。
コドモが遊びに来てくれました。
海面にいるヒトに挨拶するかのように、順番に覗き込んできます。
この子、下顎がちょっとしゃくれていますね。
たっぷり泳いだあとは、船上からウォッチングしましょう。
イルカたちは船のことも嫌がらず、近づいてきてくれました。
波をもものともせずに、軽やかに呼吸を繰り返しては潜ります。
ジニービーチ・ジョンビーチの前を通って帰港しましょう。
頭数も行動パターンもそれぞれ異なる3群に出会う、イルカ三昧の午後でした。
クジラもイルカも、その表情は日ごとに違っていて、見飽きることがありません。
ぜひまた彼らに会いに、小笠原に遊びにいらしてください。(KOKORO)