昨日から、海に入って濡れた身体に風を浴びると肌寒く感じられるようになった小笠原です。
けれど、まだまだ日差しは力強いです。
皆さま、どうぞ日焼け対策は万全になさってください。

出港してすぐ、ウェザー下にハシナガイルカがいました。
かなり広がっていて頭数の把握が難しいけれど、200頭近くいたでしょうか。
船からどちらを見てもイルカがいる、という贅沢な状況です。

ハシナガイルカは昼間は休息モードが多いですが、今日のイルカたちは移動モードです。
どんどん南に向かっています。
あちらこちらでアクティブなジャンプ行動も見られます。

あら?なんだか形の違う背ビレが目に飛び込んできました。
ハシナガイルカの群れの中に、1頭だけミナミハンドウイルカがいるようです。
スマートで華奢な印象のハシナガイルカと比べると、一回り大きくたくましく見えます。

姿を追いにくいものの、少し動きがゆっくりになったので、ミナミハンドウイルカ目指してエントリーしてみました。
二見湾の入口付近で、透明度はあまりよくありません。
遠巻きに通り過ぎていくハシナガイルカたちとややヒトの近くを泳いでくれたミナミハンドウイルカ、皆さま、ご覧になれたでしょうか。

その後は他のイルカを探しながら南へ向かいました。
南島の西側を走り、ハートロックの前で折り返します。
次いで北上し、西島を通過して弟島まで来たところで、ようやくイルカ発見です!

3頭のミナミハンドウイルカたちは、頻繁に泳ぐ方向を変えます。
残念ながらヒトと絡む気分ではないようで、水中に入ると潜っていってしまいます。
ヒトを避けるイルカに追いつくことはできないので、後ろ姿を見送りました。

イルカたちは、岩肌近くを悠々と泳いでいきます。
波やうねりのある日でも苦もなく泳ぐイルカたちが、ときどき羨ましくなります。

兄島海域公園のキャベツビーチで、ランチとスノーケリング休憩にしましょう。
美しいサカナやサンゴが、海面からでもよく見えます。

午後は、マッコウクジラを探しに沖に船を走らせます。
水深1,000mライン辺りまで来て、そろそろ水中マイクを下ろしてみようか、というところで、数頭の鯨類の背ビレを見つけました。
すぐに潜ってしまったので、「たぶんアカボウクジラですね」とご案内しました。
わたし自身はアカボウクジラは今年6月にも出会っていて、そのときは単独でした。
群れでいることもあるのだなあ、と思っていると、また浮上してきました。

少しずつ近付いてよくよく観察してみると、アカボウではなく、コブハクジラでした。
体長5mくらいの、灰黒色のクジラです。
下顎の方が長くて口角が上がっており、成体の雄は大きな歯があるのでこの名がついています。
なかなか口元まで海面に出してはくれませんが、この写真で口角のさまがお分かりになるでしょうか。

群れは10数頭で、親子が多そうです。
オトナの身体は色が濃く、傷跡がたくさんついて斑模様です。
一方、コドモはグレーの身体で、まだ傷もなくすべすべしています。

潜っては浮上するコブハクジラのウォッチングのあとは、いよいよマッコウクジラを探します。
水中マイクの音を頼りに南に向かうと、じきにブローが見つかりました。
頭の前側についた噴気孔から、斜めにブローが上がります。

数十回ブローを繰り返して、尾ビレを上げて深く潜っていきます。
周りにも複数頭が見えていましたが、1頭が潜ると順に潜っていき、海面は静かになってしまいました。
今日の群れは、団体行動派のようです。

マッコウクジラは水深1,000mの深みに潜っていって、餌を獲っています。
一度潜ると、30分から1時間は上がってきません。
わたしたちも、ここから港まで帰るのに小一時間はかかります。
名残惜しいけれど、そろそろ引き上げることにしました。

今日は、父島列島の沿岸でハシナガイルカとミナミハンドウイルカ、外洋域でコブハクジラとマッコウクジラ、と4種の鯨類に出会えた充実の一日でした。
こんな出会いを与えてくれる小笠原の海はとても豊かだなと改めて感じました。(KOKORO)