小笠原は引き続き快晴です。
深いボニンブルーが目に染みるようです。
水平線近くの小さな積乱雲が、夏らしさを感じさせます。

午前中は父島の周りでイルカたちを探しましょう。
出港して南へ走り、南島やハートロックを海から見て回ります。
空と海の青さが、美しい景色をさらに引き立てていました。

この時期の巽湾はマンタのメッカです。
少しずつ数は減ってきているものの、今年は例年よりも個体数が多いようです。
今日も、陽差しに輝く水面下に黒い影を見つけました。

ゆっくり泳いでいる個体にエントリーしてみると、ヒトに近付いてきて仰向けになりました。
白いお腹側は船上からでもよく分かります。
このマンタは好奇心が強いのかサービス精神旺盛なのか、2度目のエントリーでもまた寄ってきてくれました。
仰向けになって、ヒトの下をしばらく旋回しています。
贅沢な出会いに、船に戻られたお客さまたちも興奮の表情です。
マンタも、ヒトウォッチを楽しんでくれていればいいのですが。

西側へ戻り、ジョン沖で少し早めのお昼休憩にしましょう。
ジョンビーチやジニービーチの白砂が、今日はひときわ映えます。
透明度が良いので、水面からも海底のサンゴが透けて見えます。
ランチのあとにシュノーケルをしてみると、テーブルサンゴの下にたくさんのサカナたちが隠れていました。
岩に囲まれたエリアで、皆さま思い思いに楽しまれていらっしゃいました。

ハシナガイルカの情報が入ったので、急いで向かいます。
一度はロストしてしまったとのことでしたが、腰を据えて探してみると、いました!
波間に三角形の背ビレが輝いています。
50頭ほどの群れです。

舳先に寄ってきてくれるので、じっくり彼らの様子を見ることができます。
得意のスピンジャンプを繰り返し披露してくれる個体もいました。
高く跳び上がってはきりもみをしながら落ちていく様子に、歓声が上がります。
着水時には結構派手な水飛沫が上がっていたので、痛くないのかちょっと心配になってしまいました。

ウォッチングを楽しんだあとは、いよいよ外洋域へ向かいましょう。
マッコウ海域へ船を走らせるのは今シーズン3度目です。
これまではまだマッコウに出会えていないので、今日こそは、と期待が高まります。

父島の西方向へ船を走らせます。
水深1000mラインを越えたところでハイドロフォンを入れてみると、マッコウクジラが出すクリック音が聞こえました。
音がする方角へ進路を転じ、ブローを探します。

少し離れたところに水飛沫が上がっているのが見えます。
いました!マッコウクジラです!
丸太のような頭部を突き上げるように浮上し、斜めにブローを上げています。

群れの頭数も多く、個体の間隔も狭いようです。
1頭が潜ってしまってもまたすぐに次の1頭を探すことができます。
1頭の個体もいれば、3頭が連れ立っているのも見られます。

しばらく海面でのんびりと呼吸を繰り返した後、尻尾を上げて潜っていきました。
逞しい尾ビレで水を蹴って、深海まで潜っていくのでしょうか。

マッコウクジラに夢中になっていると、船に向かってくる背ビレがあります。
クジラに比べるといかにも小さなその姿は、マダライルカです。
かなり広がっており、100頭か200頭くらいの群れのようです。

離れたと思ったらまた現れて、競うように船首波に乗ります。
ハイドロフォンを下ろしてみると、海の中はマッコウクジラのクリック音にもまして、イルカたちの鳴き声で賑やかでした。

日が傾きかけ、帰ろうとしても、イルカたちはしばらくポーポイジングをしながら船を見送ってくれていました。
スピードを上げて、空中を飛ぶように跳ねる姿が美しかったです。

最後に、ミナミハンドウイルカがいないか、南島周りをもう一度覗いてみました。
すると、白い大きな鳥が1羽、上空を飛んでいます。アオツラカツオドリです。
翼を広げると150cm以上にもなる大型の海鳥です。
外洋域に生息しているので、島周りで見られるのは珍しく、ラッキーな出会いです。

天候にも海況にも、クジラ運イルカ運トリ運にも恵まれた、充実のツアーでした。(KOKORO)